配当成長株投資は儲かるのか!?株価・配当データを用いた検証の結果は…!?①

スポンサーリンク
配当成長株のスクリーニング

こんにちは。みなとです。

今回は、過去の株価・配当データを用いて、配当成長株投資が実際に儲かるのかを検証してみたいと思います。

結論を先に言うと、配当の成長に期待しすぎると痛い目を見る、ということがわかりました。個人的には意外な結果でした。

それでは、用いるデータと検証方法の解説から始めてみましょう。

用いるデータと検証方法の概要

今回用いるのは、2010年3月~2021年3月末までの、年度ごとの配当・株価データです。データはIRバンクのダウンロードコーナー株探掲載データのwebスクレイピングで入手しました。2010年~2021年に上場されていた企業のうち、株式合併・分割等がなく、3月末決算の企業が分析対象となります。

2010年3月期~2015年3月期のデータに基づき、2015年3月末に配当成長が見込める10銘柄に投資したと仮定します。その後、2021年3月末時点まで保有し、初期投資に対する利回り(YOI)の10銘柄平均を計算します。この値が期待通りのリターンを生み出してくれたら、配当成長株投資が成功したといえます。

10銘柄投資のタイムライン

今回は、①利回りそこそこ・増配追求パターン②高利回り・配当成長控えめパターン、の2つのパターンについて、実際にどの程度の確率で儲かるのかを検証します。なお、データの分析にはPosit Cloud(旧 RStudio Cloud)を活用しました。分析のプロセスやスクリプトは別の記事に掲載します。

検証①利回りそこそこ・増配追求パターン

検証①では、2015年3月末時点での配当利回り3%以上、過去5年の配当成長率10%以上配当性向80%以下の銘柄に投資することを考えます。利回りそこそこ、過去の実績から大幅な増配が期待でき、減配リスクが高すぎないポートフォリオ(銘柄の組み合わせ)を作成します。

上記の条件に当てはまる銘柄は、56銘柄。意外に少ないですね。

サラリーマンの個人投資家が企業の内容を理解したうえで投資できるのは、せいぜい10銘柄ぐらいだと想定します。そこで、56銘柄の中から、ランダムに10銘柄を選んで投資することにしましょう。成長率が高い銘柄に重点投資する戦略ですね。

重複なく10銘柄を選んで均等額投資してポートフォリオを作成します。これを1,000回繰り返し、各ポートフォリオへの初期投資が2021年3月末に配当で何パーセントのリターンを生み出すようになるかを計算します。10銘柄からなるポートフォリオを1,000個作成し、そのリターンの分布をみるわけですね。

我々は当初の利回りが3%以上、実績配当成長率10%以上の銘柄から構成されるポートフォリオを作成したので、2021年3月末時点で獲得できる配当からのリターンの期待値も計算できます。具体的には、2021年3月末時点での初期投資に対する利回り(YOI)は…

$$ YOI = 3\%×(1+10\%)^6 = 5.3\% $$

初期投資に対する利回り(YOI)が5.3%を上回るポートフォリオが、1,000個中に何個あるか?が焦点になります。分析した結果が次の通りになります。

利回りそこそこ・増配追求パターンのYOI検証結果
変数名平均値中央値標準偏差最小値最大値
10銘柄平均YOI4.00%3.96%0.58%2.15%5.74%
記述統計
項目YOI5.3%以上YOI5.3%未満
度数11989
割合1.1%98.9%
度数分布表

ヒストグラム中の赤線が、期待YOIの5.3%です。期待を下回る利回りのポートフォリオの割合が多いのは、一目でわかります。平均値・中央値共に実績YOIは4.0%以下であり、期待YOIの5.3%よりもずいぶん低いYOIしか獲得できていないですね。

度数分布表を見ると、やはりYOI5.3%以上の割合は1.1%とかなり小さいとこがわかります。期待ほど、利回りが成長していないのです。実績配当成長率を参考に将来も同じ速度で成長するだろう、という期待が裏切られる結果となってしまいました。

検証②高利回り・配当成長控えめパターン

検証②では、2015年3月末時点での配当利回り3.5%以上、過去5年の配当成長率7%以上配当性向80%以下の銘柄に対して投資することを考えます。配当成長については控えめなものでよしとし、初期の利回りの方を重視するパターンですね。

上記の条件にあてはまる銘柄は31しかありません

ここでも検証①と同様に、31銘柄の中からランダムに10銘柄を選んで投資するシミュレーションを行います。

2021年3月末時点での10銘柄ポートフォリオの期待利回りを計算すると、

$$ YOI = 3.5\%×(1+7\%)^6 = 5.3\% $$

検証②では、初期投資に対する利回り(YOI)が5.3%を上回るポートフォリオが、1,000個中に何個あるか?が焦点になります。分析した結果が次の通りになります。

高利回り・配当成長控えめパターンのYOI検証結果
変数名平均値中央値標準偏差最小値最大値
10銘柄平均YOI4.03%4.01%0.55%2.45%5.75%
記述統計
項目YOI5.3%以上YOI5.3%未満
度数12988
割合1.2%98.8%
度数分布表

ヒストグラムの赤い線が期待YOI5.3%ですが、この値を上回るYOIを達成したポートフォリオが検証①同様非常に少ないことが分かります。

度数分布表をみても、検証①とほとんど同じです。成長率を多少低めにして初期利回りを重視しても、リターンは期待ほど高くならないというやや残念な結果でした。

まとめ

それでは最後に、もう一度分析結果をまとめておきましょう。

  • 過去の配当・株価データを分析し、配当成長株投資は儲かるかどうかを検証した
  • 配当利回りそこそこ(3%以上)・配当成長を追求する(配当成長率10%以上)パターンだと、過去の実績ほどは増配せず、初期投資に対する利回りが期待値をこえるケースは1.1%しかなかった
  • 高利回り(3.5%)・配当成長控えめ(配当成長率7%以上)パターンでも、ほとんど同様の結果であった
  • 配当成長に期待し過ぎるのは危険かもしれない…

以前書いた記事では、単純なシミュレーションだと配当成長率が高いものほどYOIが高くなっていました。しかし、現実のデータを分析した結果、過去に成長率が高くてもそれが持続するとは必ずしも言えないようです。

高配当投資、配当成長株投資の書籍ではこういった検証をしているものは多くありません。なので、これまでは彼らの主張は真偽が不確かな部分も多かった。現実のデータからは、これらの書籍が主張している「永久増配」や「配当の高成長」といった前提は、成立しない場合も多いと言わざるを得ないでしょう。

なお、今回の分析結果は2015年3月期に、2010年3月期からの配当関連のデータを用いて投資した場合の結果に過ぎないことに注意してください。別の年度のデータを用いれば、おそらく結果は多少変わるでしょう。今回は株式分割等があった企業や、3月決算ではない企業のデータも分析対象にしていません。これらの企業も含めた分析を行うと、より正確な結果が得られると考えられます。これは今後の課題ですね。

また、今回は企業の業績や財政状態は全く無視してポートフォリオを組みましたが、配当成長株投資では優良企業に投資するため、企業の業績や財政状態も加味して銘柄選定を行うのが普通です。将来的には、そのあたりも考慮した検証を行いたいと思います。

補足(分析対象を絞った理由、小数点以下の株の扱いなど)

以下は、本編についての補足です。気になった人はどうぞ。

  • 分析対象を3月決算企業に絞った理由…他の月の企業について新たにデータ取得する手間がかかるため。
  • 分析対象を株式分割・合併がない企業に絞った理由…株式分割・合併があると一株当たり配当などを調整する必要がある。この調整に必要な株式分割・合併に関するデータを自動取得することが(私にとっては)技術的に難しく、断念した。
  • 生存者バイアス…今回は2010年3月期~2021年3月期まで継続して上場している企業のみを分析対象としたため、途中で市場から退出した企業は分析対象となっていない。長期間にわたり上場企業として存続し配当している企業は、比較的優良な企業が多く、利回りも高く安定する傾向があるかもしれない。
  • 小数点以下の株式の扱い…今回は投資対象となった10銘柄すべてに均等額投資するという仮定を置いた。例えば100万円の資金があれば10万円ずつ投資することになるが、株価3,000円の株に投資を行うと33.333…株の購入となる。小数点以下切捨てで計算しようとすると計算式がややこしくなるうえに結果は大きく変わらない。そのため、今回は小数点以下の数値があってもそのまま計算に活用している。

コメント

Copied title and URL