みなさん、こんにちは。みなとです。
前回の記事では、配当成長率が変わらずに10年、20年と配当が成長し続けた時に、当初の何倍の配当をもらえるようになるかをシミュレーションしました。成長率が高いと、長期間持つことで当初の何十倍もの配当をもらえるようになることを確認しましたね。
前回の記事を読んで、「15%、20%といった高い配当成長率は長く続かないのでは?少しずつ成長も緩やかになるのが自然では?」と思った方もいるでしょう。
そこで今回は、配当成長率が少しずつ減っていったとき、すなわち逓減した場合のシミュレーションを示してみます。
配当成長率が逓減した場合のシミュレーション
今回は、配当成長率の逓減と、それによって初期投資に対する利回り(YOI)がどう変化するかをお見せしようと思います。
配当成長率が前年比で10%ずつ減少していくとしましょう。過去10年の平均配当成長率12%の株式を例にとって考えてみます。1年目は成長率12%ですが、2年目は12% ×(1-0.1)=10.8%、3年目は10% ×(1-0.1)×(1-0.1)=9.7%…と成長率が少しずつ減っていくイメージです。
配当成長率が逓減していっても、日本のGDPと同じくらいの成長率は維持すると仮定します。過去10年のGDP成長率の算術平均が0.3%でした。そこで、配当成長率が減ったとしても、0.3%で下げ止まるとします。それにしても低いですね…。上場企業だからもっと高いところで下げ止まりそうですが、ここでは保守的にシミュレーションを行います。なお、今回のシミュレーションでは0.3%まで成長率が下がることはありませんでした。
逓減率10%の配当成長率シミュレーション結果
初期成長率 | 5年目 | 10年目 | 15年目 | 20年目 |
10% | 6.56% | 3.87% | 2.29% | 1.35% |
11% | 7.22% | 4.26% | 2.52% | 1.49% |
12% | 7.87% | 4.65% | 2.75% | 1.62% |
13% | 8.53% | 5.04% | 2.97% | 1.76% |
14% | 9.19% | 5.42% | 3.20% | 1.89% |
15% | 9.84% | 5.81% | 3.43% | 2.03% |
16% | 10.50% | 6.20% | 3.66% | 2.16% |
17% | 11.15% | 6.59% | 3.89% | 2.30% |
18% | 11.81% | 6.97% | 4.12% | 2.43% |
19% | 12.47% | 7.36% | 4.35% | 2.57% |
20% | 13.12% | 7.75% | 4.58% | 2.70% |
当初の成長率が高くても、10年後、20年後には激減していることがわかります。例として黄色く塗ってある15%の数値ですが、10年後には60%減、20年後に至っては85%以上も成長率が減っています!
当初の利回りが4%だった場合の初期投資に対する利回り(YOI)の変化についても、シミュレーションしてみましょう。
逓減率10%のYOIシミュレーション結果(当初利回り=4%)
初期成長率 | 5年目 | 10年目 | 15年目 | 20年目 |
10% | 5.93% | 7.51% | 8.64% | 9.39% |
11% | 6.15% | 7.97% | 9.31% | 10.20% |
12% | 6.39% | 8.47% | 10.02% | 11.08% |
13% | 6.63% | 8.99% | 10.79% | 12.02% |
14% | 6.88% | 9.54% | 11.61% | 13.04% |
15% | 7.13% | 10.12% | 12.49% | 14.15% |
16% | 7.40% | 10.74% | 13.42% | 15.33% |
17% | 7.67% | 11.38% | 14.42% | 16.61% |
18% | 7.95% | 12.06% | 15.49% | 17.99% |
19% | 8.24% | 12.78% | 16.64% | 19.48% |
20% | 8.53% | 13.53% | 17.86% | 21.08% |
初期の成長率15%の場合、10年後のYOIは10.2%、20年後は14.2%です。前回の成長率が逓減しないシミュレーションでは、10年後YOIは14.1%、20年後は56.9%でした。その差は一目瞭然ですね。
成長率逓減モデルが示す配当成長株投資の注意点
ここから、毎年10%成長率が落ちるだけで、長期間での配当の伸びが急激に小さくなってしまうことがわかります。これが20%、30%ともなるともはや配当成長はほとんど見込めません。初期の成長率が高いだけではだめで、高い成長率を維持できるような強みを持った企業、市場・シェアが拡大できる企業に投資しなければいけないということですね。
配当成長株投資に関する本の多くは、成長率の逓減を考えず、成長率一定で計算をしています。この想定は果たして正しいのでしょうか?
増配が止まる企業や減配する企業もあることを考えると、成長率一定という前提が常に成立するとは言えません。配当成長株投資をする場合には、成長率が逓減する場合もシミュレーションし、そのリスクを可視化しておく必要があるかもしれないですね。
そのうち、成長率一定モデルと成長率逓減モデル、どちらに当てはまる企業が多いのか?なども分析してみたいと思います。
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