配当が成長すると、10年後、20年後の配当は何倍になるか?①成長率一定の場合

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配当成長株投資のシミュレーション

こんにちは、みなとです。

前回の記事では、配当成長率が高い企業の株をバイ&ホールドすることで、10年後、20年後に配当だけでかなりのリターンを獲得できることを学びました。

ここで、配当が成長すると、10年後、20年後に配当は当初の何倍になっているかを確認しましょう。

10年後、20年後は配当は何倍になっているか?

配当成長率が5%~20%について、20年後まで成長率が変わらないという前提で計算した結果が次の表です。各セルの数値は、配当が当初の何倍になったかを示したものです。2.00なら、2倍になったということですね。

成長率5年10年15年20年
5%1.221.551.982.53
6%1.261.692.263.03
7%1.311.842.583.62
8%1.362.002.944.32
9%1.412.173.345.14
10%1.462.363.806.12
11%1.522.564.317.26
12%1.572.774.898.61
13%1.633.005.5310.20
14%1.693.256.2612.06
15%1.753.527.0814.23
16%1.813.807.9916.78
17%1.874.119.0119.75
18%1.944.4410.1523.21
19%2.014.7911.4227.25
20%2.075.1612.8431.95
成長率5年10年15年20年
配当成長率と5年後・10年後・15年後・20年後の配当額倍率

配当成長率が10%後半になると、10年後、20年後がエグイことになってますね…。15%で10年後に3.5倍、20年後に14.2倍20%だと10年後に5.2倍、20年後に32倍です!

こんなに配当成長率が高い企業なんてあるの?と疑問に思う人もいるかもしれません。実は、配当成長率が15%、20%をこえる企業は結構見つかるんです。私が保有している株の中だと、全国保証日産化学ヒューリックは、直近10年間平均の配当成長率が20%を超えています(CAGRで計算)。

このように、配当成長率の高い企業を見抜くというのが、配当成長株投資のポイントのひとつだと私は考えています。この考えが正しいか、いずれデータで検証したいですね。

配当成長率と初期投資額に対する利回り(Yield on Original Investment: YOI)

先ほどの計算結果を、初期投資額に対する利回り(Yield on Original Investment: YOI)の観点からとらえなおしてみましょう。

初期投資額に対する利回り(YOI)とは、最初に投資した金額に対して、現在の利回りがいくらかを計算したものです。YOIという概念は、『配当成長株投資のすすめ』に詳しく書いてあります(原書は The Case for Dividend Growth: Investing in a Post-Crisis World)。

例えば2023年にA社の株を1株2,000円で購入したとしましょう。配当が60円だと、利回りは60÷2,000=3%です。1年後、株価が2,200円に上昇、配当も増配があり66円になったとしましょう。この時の利回りは66÷2,200=3%と1年前と変わらない。ですが、YOIを計算すると66÷2,000=3.3%となります。当初の投資額を分母にとって計算する配当利回りが、YOIなんですね。

それでは、初期の利回りを2.0%、3.0%、4.0%としたときに、配当成長によってYOIがどのように変化するかを、表で確認してみましょう。

初期利回り2%

成長率5年10年15年20年
10%2.93%4.72%7.59%12.23%
11%3.04%5.12%8.62%14.53%
12%3.15%5.55%9.77%17.23%
13%3.26%6.01%11.07%20.39%
14%3.38%6.50%12.52%24.11%
15%3.50%7.04%14.15%28.46%
16%3.62%7.61%15.98%33.55%
17%3.75%8.22%18.01%39.50%
18%3.88%8.87%20.29%46.43%
19%4.01%9.57%22.84%54.50%
20%4.15%10.32%25.68%63.90%
初期利回り2%の時のYOI

初期利回り3%

成長率5年10年15年20年
10%4.39%7.07%11.39%18.35%
11%4.55%7.67%12.93%21.79%
12%4.72%8.32%14.66%25.84%
13%4.89%9.01%16.60%30.59%
14%5.07%9.76%18.78%36.17%
15%5.25%10.55%21.23%42.70%
16%5.43%11.41%23.96%50.33%
17%5.62%12.33%27.02%59.25%
18%5.82%13.31%30.44%69.64%
19%6.02%14.36%34.26%81.75%
20%6.22%15.48%38.52%95.84%
初期利回り3%の時のYOI

初期利回り4%

成長率5年10年15年20年
10%5.86%9.43%15.19%24.46%
11%6.07%10.23%17.24%29.05%
12%6.29%11.09%19.55%34.45%
13%6.52%12.02%22.14%40.79%
14%6.76%13.01%25.05%48.22%
15%7.00%14.07%28.30%56.93%
16%7.24%15.21%31.95%67.11%
17%7.50%16.43%36.03%78.99%
18%7.76%17.74%40.59%92.86%
19%8.02%19.14%45.68%109.01%
20%8.29%20.64%51.36%127.79%
初期利回り4%時のYOI

配当成長率15%のところで比較をしようと思い、黄色く塗ってみました。そこに注目してほしいのですが、最初の利回りが2%の時と比較すると、3%、4%と利回りが高い方が、10年後、20年後のYOIがはるかに大きな数値になっていることが分かります。

最初に利回りが2%だと、20年たってもYOIは28.5%。これでも十分魅力的ですが、最初の利回りが4%の銘柄の場合、20年後のYOIは57%にもなります。

ここから、配当成長率が高い銘柄を買うだけではダメなことが分かります。買った時点での利回りも重要です。買った時点での配当利回りも十分高く、かつ配当成長が見込める株を買うことで、配当からのリターンを最大化できるんですね。

今回は、10年後、20年後と成長率が一定であると仮定してシミュレーションを行いました。読者の中には、

「成長率が一定というのは現実的か?今は勢いよく成長していても、10年後・20年後には売上や利益の伸びが悪くなって、配当もほとんど増えないということがあるんじゃないか?」

と疑問に思う方もいるでしょう。そういった方の疑問に答えるために、別の記事で配当成長率が逓減した場合についてもシミュレーションしようと思います。

おまけ:CAGR(Compound Annual Growth Rate, 年平均成長率)について

ここから先は、若干マニアックな数式になるので、読み飛ばしてもらって構いません。

今回の記事で配当成長率と呼んでいたのは、過去10年についての年平均成長率、CAGRのことでした。売上高や営業利益、当期純利益についてCAGRを計算し、投資判断に活かすことも多いですね。CAGRとは、10年間の配当増加に関していうと、最初の配当額が年々増加して10年後の配当額まで増えた時に、毎年平均で何パーセントずつ配当が増加したかを示す数値です。

例えば、当初の1株当たり配当額が100円、10年後の配当額が3倍の300円になっていたとしましょう。この時のCAGRは、約13%となります。

検証してみましょう。100円が毎年13%ずつ増えていくとすると、1年目は100円、2年目は100円×(1+0.13)=113円、3年目は100円×(1+0.13)×(1+0.13)=127.7円…と増えていきます。これを10年目まで繰り返すと、

$$ 10年目の配当額=100×(1+0.13)^9 ≒ 300 $$

となり、確かに10年後には300円まで配当額が成長していることが確認できます。

配当金のCAGRは、一般に次のような式で求めることができます。

$$ CAGR = (最終年度配当額/初年度配当額)^{1/(t-1)} – 1 $$

ここで、tは最終年度までの年数となります。

上記の数式を使えば、ExcelですぐにCAGRが計算できます。また、Excelの場合はRRI関数を利用することでもCAGRを計算できます。RRI関数の引数に経過年数、最終年度配当額、初年度配当額を入れることで、CAGRが計算されるわけです。

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