配当金に関する学術研究!?『会社を伸ばす株主還元』感想

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書籍・雑誌記事紹介

みなさん、こんにちは。みなとです。

配当成長株投資をやるにあたって、個人投資家が書いた書籍では物足りなくなってきました。多くの個人投資家による高配当株投資本は、エピソードだけで、理論やデータに裏打ちされた分析がないんですよね。そうすると、説得力に欠けるな…と思ってしまう。

そこで、配当関連で学術書がないかなと探していた時に出会ったのが、『会社を伸ばす株主還元』。大阪市立大学の石川博行先生の著書です。どうやらこの先生、配当に関していくつも著書を出しており、この分野の専門家のようです。

さっそく読んでみたんですが、これがなかなか面白い!企業の株価データと財務諸表データ(とくに配当金額)を組み合わせて、バリバリ分析をしています。我々個人投資家ではなかなかここまで細かい分析ができないので、分析結果を共有してもらえてありがたいです。

ここでは、私が特に面白いと思った第3章「特別配当と記念配当」から、配当の価値関連性・配当の利益予測能力について紹介してみたいと思います。

配当の価値関連性

配当の価値関連性とは、配当の水準や増配(減配)が株価と関連している程度を指す概念です。

配当金の金額が多い、増配しているなどといった場合に、市場がそれを評価すれば株価が上がるわけです。

果たして市場は配当金の水準や増配を評価しているのか、それとも配当金の動きは市場は全く評価していないのか。配当金狙いの投資家といえども、やはり株価が上がると含み益が増えるのでうれしい。どんどん配当金が増えていくような配当成長株について、株価もどんどん上がる傾向にあるということが示されれば、配当成長株投資の正当性を支える強力な証拠になります。

石川先生は配当金を普通配当、記念配当、特別配当にわけて分析しています。分析結果から、どの種類の配当についても、配当金の水準・増配が株価の説明力を高めることが判明しました。

これはまさに、配当成長株投資が狙う増配を続けていくような企業への投資が、配当額の増加だけでなく株価の上昇という恩恵も受けることができることを示唆しています。配当成長株投資を支える強力な証拠だと理解できますね。

配当の利益予測能力

配当の利益予測能力とは、配当が将来の利益を予測する能力を指します。

これだけ聞くと、「なんのこっちゃ?」って感じですが… 配当の収益性シグナリング仮説を理解すると、「配当が将来の利益を予測する」という言葉の意味が分かります。

配当の収益性シグナリング仮説では、経営者の高い配当金を維持する・増配するという行動が、将来の収益性に対する経営者の自信のあらわれだと解釈します。将来の収益性の見込みについて詳しい情報を知っている経営者は、自社の今後の業績見通しが明るいことを企業外部の投資家に伝えたい。ただ、「来期以降もうちの企業は儲かりまっせ!」と言っても、投資家はそれだけではなかなか信じることができないでしょう。口では調子のいいことを言ってるが実態はボロボロ、なんて企業はいくらでもありますからね。

そこで、来期以降も高い収益性を維持できると確信している経営者は、高い配当金の維持・増配を行います。経営者が高い配当金を維持する、増配するとなれば、配当の原資となる利益を次期以降もしっかり稼げると経営者が確信していることを、外部の投資家に説得力のある形で伝える(シグナルを送る)ことになるわけですね。高い配当金・増配は、口先だけの「儲かりまっせ!」よりもよっぽど信頼性が高い「将来儲かりそうな証拠」ということです。

ただ、配当の収益性シグナリング仮説が成立するためには、実際に高配当や増配した企業の収益性が、翌期以降も高くないといけないわけです。そこで石川先生は、株価に影響を与えそうな様々な要因の影響を加味したうえでも、配当金の水準や増配が将来の収益性の高さと関連があるかどうかを、膨大なデータを分析して検証しました。

分析の結果、配当金の水準・増配ともに、企業の将来の収益性を説明する、すなわち予測能力があることが示されました。

これは、配当成長株投資で選んだ銘柄をホールドするときに参考になる知見ですね。配当金の金額が多い企業や増配している企業は将来の収益性も高いわけだから、稼いだ利益から将来も配当を支払ってくれる可能性が高い。高配当企業・増配企業については安心してホールドしていればいいわけです。一方で、例えば減配があった場合には将来の収益性も低い可能性が高くなる。こうなると、稼いだ利益から配当をどんどん増やしてもらうという配当成長株投資の前提が崩れてしまいます。そんな時はさっさと株式を売却したほうがいいかもしれません。

まとめ

それでは、今回の記事をまとめます。

  • 配当金の水準・増配は株価と関連する。配当成長株投資をしていれば増配とともに株価が上がっていく可能性がある
  • 配当金の水準・増配は将来の収益性を予測する。将来収益性が高い企業は配当額の維持・増配もしてくれるだろうから、安心してホールドできる

『会社を伸ばす株主還元』を読んで、配当成長株投資を支える強力な証拠が見つかったなと感じました。この本には、今回紹介できなかった部分にも、興味深い知見がたくさん書かれています。興味がある人は、購入してみてはいかがでしょうか?会計学・簿記を勉強したことがある&統計学(計量経済学)をかじったことがある人なら、趣旨はつかめると思います。

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